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僕はアイツじゃないし、アイツは僕じゃないんだよ

それは、夕日も落ちそうな放課後。



俺は教室で待たせていた恋人の琥冬の下へと足早に駆け寄る。
いつもは体育館まで来るけど、今はもう寒いからストーブのある教室で待っててくれ、と粘って教室で待ってもらうことにした。
体育館で俺のこと見て待っててくれるのは嬉しいけど…それで風邪なんて引かれたら…、って思う。


そして、琥冬が居る教室まで近づくと琥冬ともう一つ聞きなれた声が聞こえて来る。
いつもなら、琥冬とその声の主の人物なら廊下に響くほどの言い争いをしているのに、どこかしっとりとした会話をしていた。
だから、何を話しているのか、と気になってこっそりと教室をのぞいてみた。



「…君はいつも寂しそうな目で笑うんだね…」
「何を言っているのか良く分からないわ…」


教室を覗くと琥冬と俺の双子の柚月が机を挟んで座って居た。
琥冬は柚月の頬に手を添えじっと見つめていて、二人ともとても切なげな表情を浮かべている。
何を…どんな話をしてるのか、この会話だけじゃ良く分からない。
…もしかしたら…、なんて思うのは、早い…多分…



「俺が気付いていないとでも思っているのかい…?」
「だって、貴方はいつも私の兄弟を見ているじゃない…」



伏し目がちに告げた柚月の言葉にドキッと胸が高鳴る。

─…柚月も琥冬のことが…?

と、怖くなった。
そして、次の琥冬の言葉に衝撃が走った。



「…いつも君を重ねているよ…あの子が君だったらって、ね。」



俺は今の今まで、柚月として見られていたのか…?

面影だけを俺だけに追っていた…?



「…似ているけれど…あの子は私じゃないわ…そして、私もあの子じゃない…だから、今貴方の傍に居るのはあの子…」
「それでも、俺はずっと君が好きだよ…一目見た時からね…」


琥冬の放たれた言葉に追い討ちを掛けられる。
ショックで頭が真っ白で、これ以上この二人を見ていられなくて、その後の会話も聞きたくなくて、走った。もしかしたら、自己新記録が出るんじゃないかと言うくらいに、思いっきり廊下を走った。頬を涙で濡らしながら…


そして、その日俺は一人で家に帰った。
家に帰った後、何度も琥冬からの電話やメールがあったけど、全て無視して、柚月が帰ってくれば「琥冬待ってたよ?」とか聞かれたけど、柚月の質問も何も返さずに黙りこくり、そのまま次の日になった。




「柚流、昨日どうしたの…?」

ずっと琥冬を避けていたが、昼休み俺が教室を出る前に琥冬がやって来て逃げ遅れてしまい、琥冬に腕を掴まれた。
けれど、俺は琥冬の言葉に何も答えない。

昨日の今日でどんな顔して向き合えと…?
どんな風に接しろと…?



「あら~昼間から修羅場かい?…昨日、恋人に先に帰られた琥冬クンv」

ニヤリと笑いながら琥冬の肩を叩きやってきた柚月に、琥冬は思いっきり嫌そうに顔を歪める。


「何?それとも、琥冬クン振られちゃった?いやぁ~んv可哀想に…!たっくさぁーーーーん同情してあげても良くてヨ!オホホホホッ!」
「邪魔」
「…あれ?何。本当に振られた?」

柚月が似合わないお嬢様言葉に琥冬がそれを断ち切るかのようにキッパリと言い切ると、柚月はキョトンとした。


「振られてないよ。まぁ、柚月は振られるような人が居なくって安心だねv」
「ご心配せずとも、私はそんな人作らないから。大好きな柚流居るしv」
「柚流は俺のだから、ごめんねぇ~v俺達愛し合ってるからv」
「私と柚流は切っても切れない血の繋がりがあるからぁ~アンタも邪魔出来ないからv」
「え?邪魔してるのは、どっからどう見ても柚月だよねv」
「邪魔して来たのは琥冬でしょv」
「違うなぁ、柚流は俺を選んでくれたんだよv」
「それは、仕方なく選んであげたんだよv」
「………い…っ…」

「「…え?」」

「煩いっ…!!何が好きだよ、愛してるだよ…!お前ら俺で、ずっと…っ…」

二人が言い争っている中、ぎゅっと自分の掌を握り怒鳴り叫ぶ。
二人は吃驚したように目を丸くしているが、俺は気付かず歯を食いしばった。



何が言いたくて、何を言おうとしているのか自分でも分からない。
ただ、悔しくて…辛くて…胸が締め付けられる。

いろんな感情が入り混じって頬に涙を伝わせた。
すると、目の前に心配した琥冬の顔が入り同時に俺の頬に伸びてきて居た琥冬の手を、思い切り振り払い、その場を逃げるように後にした。




「…っ、……」

生徒会室の隅で蹲り声を噛み殺して泣く。
どうして、生徒会室に来たのか良く分からない。
走っていたらここにたどり着いていた…


ずっと、好きだと、愛している、と告げてくれた琥冬。
初めて琥冬に会ったときの印象は本当は良くなかった。
だけど、あいつを知れば知るほど気になっていて…いつの間にか、琥冬に惚れていた。
自分でも不思議なほど琥冬に嵌っている。

そんな相手が本当は俺じゃなくて他の…双子の柚月を俺と重ねてみていたなんて…

…悲しかった。悲しかった以上だ。
裏切られた気分だ…信じていたのに…




「…柚流…どうしたの?」

いつの間にか生徒会室に入って、声を掛けながら俺の頭を撫でてきた琥冬に、また手を思いっきり振り払う。

「柚「俺はあいつじゃないっ!」」

琥冬の言葉を遮り、泣き腫らした顔で琥冬を睨みながら声を上げる。

「…俺は、あいつじゃ、ない…っ…」
「あいつって…?」
「聞くなよ!俺が知らないとでも思ってんのかよ…!」
「…ごめん。本当に分からない…」

本当にわかっていないのか、琥冬は眉を顰め何かを探るように視線を泳がしている。



「柚月に決まってんだろ…!昨日の放課後、お前たちが話してるの聞いてたんだよ…!!」
「え…?昨日、見てたの…?」

何かの聞き間違いだと、否定の言葉は無く驚いた様子で目を丸くしている琥冬に、辛くなって俯くと、琥冬から笑い声が漏れてきた。



「そんなに可笑しいこと「嬉しい…」」

笑う琥冬へ、また声を上げようとしたら言葉を遮られ、ふわっと包み込まれるように抱きしめられた。
俺は訳も分からず、離せ、と琥冬の肩を押すが離すそぶりが全く見えず、琥冬は言葉を続けていく。



「柚流は俺が柚月のこと好きだと思ってるんだ?」

この期に及んで何を言うんだろうか。
昨日、その場を目撃したと言うのに…。



「文化祭で俺のクラス何やるか、柚流知ってる…?」
「確か、演…」

演劇、と繋げようとした自分の言葉にハッとする。



「…分かった?」

くすくすと笑みを零す琥冬にカァーと顔を熱くさせる。
文化祭で演劇…ということは、昨日俺が見たあの二人は…



「大分、タイミングが悪かったんだね、柚流。俺が、柚月に惚れてるでも思った?」

俺を抱きしめたまま未だにクスクスと笑う琥冬。
単なる自分の勘違いで火照る顔が止まらない。
もう少し考えていれば分かったことなのに…



「でも、柚流が妬いてくれるなんて嬉しいな」
「煩ぇ!勘違いだ…!!」

くすくすと笑い続ける琥冬へ顔を真っ赤にしながら怒鳴ると、琥冬の笑い声は止まり、まだ熱を帯びた俺の頬へ琥冬の手が伸びてきた。
今度はその手を振り払うことはせず、逆に琥冬の手へ擦り寄っていく。



「…本当に怖かった…胸が張り裂けるってこういうこと言うんだな…」
「ごめんね…でもね、…俺と柚月って有り得ないよ」

にこにこと、有り得ないを強調して言う琥冬に俺も否定はしない。
琥冬と柚月なら、良い友達っつーか悪友って感じ。
カップルとかすっごい不釣合いな言葉な気がする…


そして、落ち着きを取り戻し教室に戻るとそこには柚月が一人教室に座っていた。
どうやら、俺たちを待っていたらしく、俺は恥ずかしそうにしながら事情を話すと、柚月は「アホ?」と真顔で返してきた。
どうせ、俺はそう言われるほどの勘違いしたけどな…!





でも、本当にそれが現実じゃなくてホッとする。
もし本当に琥冬が俺じゃなくてあいつを選んでいたら…
俺はどうなってしまうのか…全く想像が付かない。

それだけ、俺は琥冬を愛してるんだ…







御題:僕はアイツじゃないし、アイツは僕じゃないんだよ(SCHALK.様の「ツインズ9」より)

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