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世界にひとり取り残されている気がして (前編)

それは、俺が高校にあがる前の話。



いつもの通り部活が終わって…
部活の友達と遅くまで遊んで…帰ろうとしたとき。

いつものように家に帰るのを戸惑った。

家に居るのがキライだったから。
誰か居るわけじゃないけど…
だから、それが余計に嫌だった。

俺にとって暖かい家庭なんか夢の話だから。

あの家で独りで居るのは未だキライ。



─ぽつぽつ…
ふと、空から小さな雫が落ちてきた。
それは、段々と強まって行き直ぐに俺をずぶ濡れにしようとする。
でも、俺は屋根の下に行きそれを逃れ大きな溜息を吐き空を見上げた。

「帰るしかないのかな…」
そう呟いた時、とんとんと肩を叩かれ振り向くと、そこには40超えていそうな中年太りしたおっさんが立っていた。

「君、暇?」
「だったら何?」
「3万でどうかな。」
気色悪い顔でへらへら笑いながら3万と提示してくるおっさんに目を細めた。
実はこういうことを言われたのは初めてではない。
友達と遊んだ帰りに一人で立っていることはいつものことだから。
おっさんやら水系なお姉さんに声を掛けられたことが何度かある。
でも、それに一度も乗ったことは無い。
いくらなんでも…そこまではしたくなかったから。
だけど、今日は雨のせいもあってか気分は優れなくて…


「別に金に困ってるわけじゃないから、金は要らないよ。」
淡々とそう告げるとおっさんは嬉しそうに笑って傘を差し、俺の腕を掴みながらホテル街へと足を進めようとした。が…その時。


「悪ぃな、おっさん。そいつ俺が予約してるから。」
おっさんの腕から俺を離し、にっこり笑いながら有無を言わさないような口調で20くらいのお兄さんが言うとおっさんは凄んで固まり、お兄さんは俺を引っ張ってホテル街とは反対の道へズカズカと歩いていった。





─そして、いつの間にかそのお兄さんの思わしき部屋に連れて行かれた。


「あの…俺の知り合いじゃないよね?」
「知り合いではねぇけど、顔は良く見てる。」

雨に濡れた服を着替えながらそうキッパリと告げられ、怪訝そうに顔を顰める。


「お前良く、あそこに立ってるだろ。」
「うん、まぁ…」
「そんで、変なおっさんやら水商売っぽいねぇちゃんに声掛けられてるだろ。」
「…う、うん…」

…なんで、そんなことまで知ってんだ?
もしかして、ストーカー?!…って、まさか。
この人の部屋にきたとき、女の人の香水の匂いしたし…


「あぁ、それと。ほら着替えとタオル。」
「あ…ありがとう…てか、何で俺にこんなことしてんの?」

差し出された服とタオルを手に持ちながら尋ねる。
お兄さんは着替えるのを途中で止め、少し黙り込むと呟くように言った。


「俺に似てるから。」

今日、初めて言葉を交わす相手から出る言葉なのだろうか。
否、普通は出ないと思うんだけど。


「なんとなく、雰囲気が。昔の俺に似てるかなぁ?って思った。…世界にひとり取り残されてる、ってな感じ?」



そして、お兄さんはそのままずっと昔の話をした。
どうやら俺と似たような境遇で、今一人暮らしをしているらしい。
でも、とあることがきっかけでそんなことは思わなくなって、性格も明るくなったらしい。

どうして、そんな話をするんだろうか、聞いたら「似てる気がしたから」と同じ答えが返ってきた。
だから、俺も家族の話をして、家に帰りたくない、と言う話をしたら好きな時に此処に来て良いと言われた。



「そういえば、お前名前は?」
「楓。」
「俺は樹。名前まで似てるんだな、同じ自然の名前。」

そして、樹はけらけら、と人懐っこく笑った。

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