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呼ぶよりも… 

両親から一番最初に貰うものが、名前。
愛情の込められたプレゼント。
それは、ずっとずっと自分と一緒に居るもの。



『名前の由来はなんですか?』
そんな宿題を小学生の時出された記憶がある。
その時は勿論、親に尋ねて聞いたのだが…
今ではその由来も、もう覚えていない。


【朝月晃一郎】
フルネームで呼ぶには長くて、晃一郎、と呼ぶのもやはり少し長いと思う。
だから、俺はいつも「晃で良い」と言う。

そして、いつの間にやら晃一郎と呼ぶのはごく僅かの人しか言わなくなり。
俺は、自分の名前を大事な誰かにしか呼ばせないことにした。
だから、「晃で良い」ではなく、「晃で」というようになった。




『もしもし、晃?晃の荷物がうちに届いてるから持って帰ってね?』

家に帰ると母親の伝言が電話に入っていた。
両親は既に俺を晃と呼び、妹は昔からお兄ちゃん。
家族もあまり晃一郎と呼ぶことは滅多にない。



「晃一郎ー!!」

遠くから名前…しかも、晃ではなく晃一郎と呼ぶ声に反応して振り向く。
振り向かなくとも、声と呼び方で誰なのかは直ぐに分かったけど。
そこは、まぁ…条件反射というか振りまかないと失礼極まりないし。
そして、振り向くと思ったとおりの人物。…と、もう一人。



「久しぶり、晃一郎。」
「恭介に綾香かぁ…懐かしい…」

恭介と綾香は俺の幼馴染。
…と言っても、俺が教師になってからは碌に会ってないけど。



「晃一郎、ちゃんと教師やってるの?」
「高校だっけ?学校。俺、晃一郎に教えてもらいたくねぇなぁ~」
「何言ってるのよ。大学の時、恭介ってば晃一郎に教えてもらってた癖に。」
「本当、恭介って物覚え悪くってさぁ、高校生に教えるのより大変」

久しぶりに会う幼馴染との会話が本当に懐かしくて楽しい。
大学の時はいつも恭介と綾香と一緒に居た。
大学の外では、恭介といつも二人だったけど。綾香には彼氏居たし。



「そうだ、晃一郎。」
「ん?何?」
「まだ、名前とか拘ってたりすんのか?」
「あぁ…覚えてた?」
「それは、私も覚えてるよ。」

「ねぇ?」と綾香と恭介がお互いの顔を見て頷く。
そういえば、昔二人にだけ言った記憶があるな…とうっすら思い出す。





それは、進学先も決まり高校も卒業近くの頃。

『なぁ~聞いてくれよ!二人とも!今日、女友達のこと名前で呼んだらさー彼女に怒られたんだけど…』
『あ、私も。恭介と晃一郎とか名前呼ぶと怒られるのよねぇ…他の奴の名前呼ぶな、って。』
『マジで?なんか、自分だけ呼んで欲しいみたいなんだよなぁ…晃一郎はそう言うのないわけ?』
『あぁ…まぁ、無いことは無いけど…』
『ってか、晃一郎はあっても無くても変わらないよな。』
『どうでも良さげだもんねぇ。』
『俺は…呼ぶより、呼ばれるほうが気にするから。』

俺の部屋に恭介と綾香が来て、恋人の話題で盛り上がっていたとき。
他の異性の名前を呼ぶ話で盛り上がっていた。


『呼ばれるほうってどういうこと?』
『恭介と綾香は別だけど…俺、晃って呼ばれてるだろ?』
『そりゃぁ、そう呼んでくれ、って言うからな、晃一郎。』

『自分の名前だから、さ…やっぱ好きな子だけに呼ばれたいんだよ。特別だから。だから、相手が誰かの名前呼ぶのは気にしないし、なんて呼ばれようとも良いんだけど…俺のことは、名前で呼んでほしい、な…』


そういったのは、数年も前のこと。
そんな昔のことを良く覚えてたなぁ…この二人は。



「でさでさ、話変わるんだけど…今度高校ン時の同窓会やるとか話してるから。」
「本当に話が思いっきり変わったなぁ…」
「細かいことは気にしない!な?お前も行くだろ?」
「恋人がなぁ~…許してくれるかなぁ?困ったなぁv」
「困った、言う割りに凄く嬉しそうな顔してるわね…」
「いやぁ、さ!行ったらヤダ、とか言われたら…どうしよう…v」

思わず、泣きそうな顔で上目遣いする戒斗を想像してしまい顔がにやける。
そんな様子に二人は唖然としているのか、口をポカーンと開けている。
それも、まぁ…分からなくは無い。
恋人のことでこんなことになるのは初めてだから。



「晃一郎の今の彼女って愛されてるんだなぁ…」

恭介がポツリと呟く。彼女ではなく、彼氏、なんだけど…
可愛いから彼女でも良いな、と思わず心の中で突っ込んだ。





「戒斗~ただいま~」
「おかえり、晃。」

家に帰ってくると戒斗が出迎えてくれて、嬉しくて思わずきつく抱き締める。

「苦しいよ、晃」
「あ、ごめん。戒斗が可愛いからつい。」

小さく笑いを零しながら言う戒斗に抱き締める腕を緩めながら言うと、笑った顔がむっ、と強張る。
それが、また可愛いと思ったのは心にしまっておこう。
思わず口に出して、伝えたいのは山々なんだが…
可愛いを連呼して、拗ねられて離れていかれるのは、とても嫌だから。


「…晃、…一郎…?」

一人で悶々と考えていると不思議そうに首を傾げ俺の名前を呼ぶ戒斗に、ドキッと心臓が跳ねた。
つい先ほど、名前の話をしていたから余計なのか…
戒斗から呼ばれる名前に嬉しくて、とても幸せに思った。
名前を呼ばれるのは初めてではないけど、普段は晃って呼ばれているから。


「戒斗…もう一回言って?」
「…え?」
「名前。」
「えっと…晃一郎…?」

不思議そうに俺の名前を呼ぶ戒斗が、たまらなく愛おしくて再びきつく抱き締める。





初めて親から貰ったプレゼント。
ずっと一緒に居るもの。
だからこそ、大事にしたい。

君の声と口から紡がれる自分の名前は何よりも嬉しい言葉なんだよ。

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